2002年3月 年明け一発目舞台の巻
やっと来たよ。まってたよ・・・祭
俺達は年数回の祭での神楽奉納の他に青年文化祭とか各種イベントで舞を奉納するが、やっぱり祭典での神楽奉納が一番気合いが入るし何より諸先輩方から今後の芸域を広める上でのアドバイスを頂ける。
無論、各種イベントの時に手を抜いているとかいい加減に舞っている訳ではないが、それらは、時間制限とか舞台空間での誤算が生じやすい。特に時間制約が大きなネックとなっていて、一番見せたい所や手継を省略しなければいけない時とかは「これでいいのか?」と疑問を覚えることも多々ある。与えられた舞台・時間で100%の舞を奉納できるのが本当の神楽師ではあるのだけれど、基本的に本物の舞を体で習得しきれていない自分らにとっては、なかなかキツイところである。
さてさて、前置きは忘れて頂いて、今日は俺のおふくろの実家がある地区での祭典だ、ここの地区の祭典は雄勝町に春を告げる祭典でもある。新春を迎え一番最初の神楽奉納がある祭なのだ。別名ブランク解消の祭典と若者達は呼んでいる。11月に奉納を終え神楽師達はオフシーズンに突入するのだが、このオフにさぼっていたか、はたまた自主練習をしていたかの結果が問われる祭で、大体3月ころに行われる。
熟練の先輩でも間違うことがある怖い舞台である。
今日も道具づくりから始まる。 最近ちょっとこまったことがおきている。大半の小道具は、和紙・竹・麻の紐でつくる。和紙と竹はそれなりのものが手にはいるが、問題は麻である。最近の麻は乾燥海苔みたいにパリパリのが多くてしっとりと強度のある麻が手にはいりずらくなってきているのだ。麻をよって紐をつくり、鉾を縛る、弓を張る、釣り糸を作る訳だが、パリパリの麻ではなかなか強度がでないのだ。大金を積んで丈夫なよい麻を手に入れることはできるだろうが、あくまで地域の庶民による大衆の祭であって高級なものをふんだんにつかって事を成立させてはいけないと思う。やがては、和紙も竹も手に入らなくなってくるのではないかと思うとちょっとさみしい気がする。そうならないように願う限りだ。
さてさて、初矢の準備でもしようと思ってたら、今日は地元出身の先輩がいるからそちらが道祖を舞う事になった。
どれどれ先輩の舞でも見て勉強しようかな・・・と片隅から除いて見ることにした。この先輩の舞は所作がきれいで目標とするところでもある。ちなみにカンナギと呼ばれる台詞は苦手らしい・・・
流れるような優雅な舞・・・やっぱり上手だなぁと関心していたら事件発生!!カンナギが出てこない。舞が完璧だっただけにショックを隠せない様子、その動揺がこっちにも痛いくらい伝わってくる。先生たちも苦笑い、結局思い出せずしかたなく先生がマイクで口ぱく・・・そして終了、楽屋でみっちり説教を食らっていた。
皮肉にもその出来事で俺はすっかり冷静になれてその後の自分の出番ではもてる力をフルに発揮することができた。・・先輩ありがとう!!!
その後、説教していた先生の出番蛭児、どれ先生の技を盗もうと楽屋を抜けだし見学、。?あれ?なんか変だ?なんだろう?舞もカンナギもすごく上手なのになんだこの違和感は?・・・・・あっっっっっ袴の色が違う。蛭児の袴は緋色の袴のはず、それが白袴・・どうすることもできない。一同苦笑い
教訓 その年一発目の神楽奉納はかなり気合いを入れないとどこかしら間違う。という教訓でした。