五矢(ごや)


 

 天照皇大神に反抗し乱行を働いた素戔嗚尊は、手足の爪を抜かれ高天原を追放されました。自分がわがままであったことに気づき悔いながら毎日苦しい旅を続けました。
 良い神になって人々を救い、今までの償いをしようと諸国を巡っているうちに、行けども行けども人家はなく何も食べず空腹の内に日が暮れはじめ困り果てたとき二軒の民家を発見しました。

一軒は見るからに豊かそうな趣の家でもう一軒はとても貧しい様子でした。二軒は兄弟で豊かな方は巨旦(※)といい貧しい方は蘇民(ソミン)といいました。はじめに巨旦に宿を乞いましたが、ぼろぼろの出で立ちの素戔嗚尊を見て断ってしまいました。次に蘇民の家を訪れ宿を乞いました。蘇民は尊を温かく迎い入れ粟の飯でよければと馳走し、夜具もないので粟殻をしいて休ませました。
 そのもてなしに非常に感激した素戔嗚尊は、貧しい蘇民に色々な知恵を授けました。教えにより蘇民は日に日に豊かになり一方巨旦は落ち目になり遂にはその土地を去っていったそうです。「情けは人の為ならず」ということを舞っている神楽です。

この演目で使用される五本の矢は、「悪魔払いの矢」とされる縁起物であり、放たれた矢を競って拾います。


 ※巨旦=こたんが一般的ですが、当団体には「きょたん」の読みで伝承されています。 

 


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